呼吸が苦しそう…即日ICU入院が必要となった猫ちゃん

ミモザ犬猫クリニック院長です。
今回ご紹介するのは、呼吸が苦しくなり、即日入院が必要となった7歳のスコティッシュフォールドちゃんです。
検査の結果、「肺血栓塞栓症」という重い病気が疑われました。
呼吸状態が悪化していたため、移動の負担を少しでも減らす目的で、より近隣の当院をご紹介いただきました。

来院時には呼吸が非常に苦しそうで、すぐに酸素投与が必要な状態でした。
紹介元の先生が事前に基礎疾患や治療経過を共有してくださっていたため、あらかじめ準備していた酸素室で速やかに治療を開始することができました。

現在治療中の疾患としては、心臓の異常、免疫介在性溶血性貧血などがありました。
このことを念頭において、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などの他、必要な検査を追加します。
呼吸状態が悪いので、酸素投与を行いながら慎重に検査を行いました。



エコー検査所見:心室中隔壁扁平化・主肺動脈拡張・三尖弁逆流などの強い右心負荷(=肺高血圧症)、左心房の軽度拡張
レントゲン所見:肺野の不透過像、心拡大
血液検査所見 :D-ダイマー高値、ヘマトクリット値正常
紹介元の先生からのデータや、飼い主様がお持ちいただいた過去のデータと確認すると、右心の異常は今回が初めてのようです。

・2週間ほど前から免疫介在性溶血性貧血を治療中
・呼吸困難と初発の右心不全(肺高血圧症)
・血栓傾向を示す血液の所見(D-ダイマー高値)
これらの所見と病歴から、免疫介在性溶血性貧血に続発した「肺血栓塞栓症」を第一に疑いました。

肺血栓塞栓症は致死率の高い重篤な疾患です。緊急的に入院管理が必要なことをお話しし、直ちに治療を開始しました。
抗血小板薬や肺血管拡張薬、その他心臓の治療薬などを使用しながら、肺のレントゲン、心臓のエコー検査、血液所見を細かくチェックし治療薬を加減します。
かかりつけ先生の元で、貧血の治療が開始されていたことと、心臓のお薬も服用していたこともあり、入院3日目には呼吸状態、レントゲン所見・心エコー所見も改善し、入院から1週間で元気に退院できました。


肺の異常陰影は改善し、右心の異常も消失しました。元々の心臓病と貧血については、今後も注意深く経過を追っていきます。

今回のケースでは、紹介元の先生との連携と飼い主様からの過去データのご提供によって迅速な診断に至り、致死率の高い肺血栓塞栓症に対しても速やかに集中治療を行うことができました。地域の先生方やご家族との連携の大切さを再認識する症例となりました。