ミモザ犬猫クリニック院長です。
今回ご紹介するのは、糖尿病を患ったわんちゃん・ねこちゃんの実際の症例です。
私たちホームドクターが診るわんちゃん猫ちゃんの糖尿病は、軽度で発見できたケースから、命に関わる状態で来院されるケースまで様々です。
- 主症状
- 合併症の有無
- 必要な治療
などは進行度合いにより大きく異なります。
当院で経験した3つの異なるケースを通して、早期発見の大切さや定期チェックの重要性をお伝えします。
症例紹介
ケース1:通院の負担を減らして治療を継続したいわんちゃん
10歳・犬
他院で糖尿病の治療を続けていましたが、飼い主様がご高齢で、
遠方への通院が難しくなったため、歩いて通院できる当院へ転院されました。
当院では、これまでの治療内容をそのまま引き継ぎ、
- インスリン注射(1日2回)を継続
現在も血糖は良好に維持できています。
糖尿病は 生涯にわたる治療が必要な病気 であり、
状態が安定していても 定期的な検査と継続治療が不可欠 です。
その意味でも、無理なく通院できる環境は大切な治療の一部といえます。
ケース2:衰弱した状態で来院し、集中治療が必要だった猫ちゃん
11歳・猫
「立てないほど衰弱している」とのことで来院。
他院でインスリン治療中でしたが、徐々に痩せていることも心配されていました。
来院時には、
- 眼振(目が揺れる)などの神経症状
- 重度の電解質異常を伴う脱水
- 極端に高い血糖値
- ケトン尿
などがみられ、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) と診断しました。
命に関わる状態であったため、すぐに入院・集中治療を開始しました。
治療内容:
- 点滴による脱水と電解質異常の補正
- 血糖値のこまめな測定とインスリン投与
- 長時間作用型インスリンへの変更(維持治療の見直し)
入院期間は約1週間で、そのうち3日間は集中治療が必要でした。
幸い、インスリン抵抗性の原因となる 副腎異常・下垂体疾患 などの基礎疾患は見つかりませんでした。
治療後は順調に回復し、体重 2.6kg → 現在 4kg の適正体重へ改善。
現在は、血糖値などの定期チェックとインスリン治療のみで安定した生活が送れています。
単にインスリン治療だけでなく、集中治療を要する重症例だったケースです。
ケース3:糖尿病と気づかずに脱水が進行していた猫ちゃん
11歳・猫
飼い主様が家を空ける期間、シッターさんがお世話をしていました。
その際、「お水の減りが早い気がする…」と言われていたとのことです。
帰宅後、猫ちゃんがぐったりして動けない状態となり来院。
検査の結果 、糖尿病に加えて、脱水と電解質異常も同時に見られました。
さらに、重度に肥満と肝臓の異常もみられ、 肝リピドーシス(脂肪肝)を合併するリスクも高い状態でした。
そのためすぐに入院治療へ。
治療内容
- 点滴による脱水と電解質異常の補正
- 血糖値のこまめな測定とインスリン投与
- 肝臓の比護剤の投与
- 肝リピドーシスに陥らせないためのチューブ給餌(経鼻チューブ)
入院期間は1週間近くに及びましたが、退院後は経鼻チューブも外すことができ、
現在は通院して血糖値などの定期チェックと自宅でのインスリン投与だけ行っています。
3つの症例から分かること
今回ご紹介した3つの症例から分かるように、糖尿病は進行度によって症状も治療も大きく異なります。
そのため、糖尿病を良い状態で維持していくには、
「早めの受診」と「こまめな定期健診」 の2つがとても重要になります。
✔ 重症化させないためには早めの受診
軽度の段階で治療を始められた子は、比較的早く安定しやすい傾向があります。
一方で、今回の症例にあったように、
- ケトアシドーシス(DKA)を起こしている
- 強い脱水や電解質異常がある
- 肝リピドーシスを合併している
といった状況では 入院治療が必要 となるばかりか、命に関わることもあります。
だからこそ、異常を早めにとらえて病気の初期のうちに受診することがとても大切です。
糖尿病を早期に見つけるポイントは後述します。
✔ 糖尿病は安定していても定期チェックが必要不可欠
糖尿病は、適切な治療と日々のケアで良い状態を維持できる病気です。
また、安定しているように見えても、
- インスリン量・種類の見直し
- 定期的な血液・尿検査
- 体重と摂取カロリーの管理
- 合併症のチェックや基礎疾患の再評価
など、調整が必要なポイントは多くあります。
今回の3例も、どの子も「通院を継続することで安定を保てている」ケースです。
糖尿病にいち早く気づくチェックポイント
以下は、糖尿病でよく見られるサインです。
- いつもより水をよく飲む
- おしっこの量が増える
- 痩せてくる(食欲があっても・なくても)
- 元気がない、疲れやすい
- 歩き方の異常(進行した場合)
糖尿病は、気づいた時にはすでに進行していることも少なくありません。
これらのサインは糖尿病に限らず、さまざまな病気の早期発見のきっかけになるため、
日頃から観察しておくことがとても大切です。
また、定期的な健康診断(血液・尿検査など)を受けておくと、より安心と言えます。
特にシニア期では、糖尿病以外にも腎臓・肝臓・内分泌疾患など「外から見えない変化」が増えてくるため、健康診断の役割はとても大きくなります。
安心して長く付き合うために
糖尿病は、一度診断されたら生涯にわたって治療が必要です。
しかし、定期的なチェックと適切な管理のもとに毎日投薬を続けることで、わんちゃん・ねこちゃんは穏やかな毎日を過ごすことができます。
「水の減りが早い気がする」「尿の回数が多いな」など、ちょっとした変化に早めに気づけるのは、毎日そばにいる飼い主さまだけです。
わが子の体調の変化が気になる場合は是非当院にご相談下さい。

